資金ショートしない為の対策(前編)
~資金ショートから自社を守る~

資金ショートへの対策が十分には出来ていない会社が少なくありません。しかし、資金ショートは、対策を真剣に検討する価値のある問題です。ポイントを理解して頂き、この問題を適切に検討出来る自信を付けて下さい。

会社が資金不足に陥ってしまうと(資金ショートの発生)、会社は簡単に潰れてしまいます。理解されていない経営者の方もいらっしゃいますが、会社の業績がどれほど良かったとしても、会社が潰れてしまう事はあり得ます。

しかし、よほど目先の資金が枯渇しかけている会社を除き、この事態を本当に想定して日頃の事業運営を行っている会社は多くありません。これは、この問題への対応が十分には行えていない会社が多い事を意味しています。

この記事では、経営者の皆様が、自社の資金ショートを防ぐ為の対策が十分に取れているかどうかを確認する為の情報を提供します。自社の対策について確認する機会にして下さい。

自社が資金ショートを起こさないと自信を持つ為の条件

まず、可能であれば、以下の質問について、ご自身なりの回答を用意した上で読み進めて頂く事をお勧めします。
貴方の会社は、「当面の間、現金(資金)が不足する事態(資金ショート)を起こさない」と自信を持って言えますか?
勿論、ご自身が「資金ショートを起こさない」と考える理由も含めて、お考え下さい。

この記事の目的は、この質問に自信を持って「自社は大丈夫」と答えて頂く為の情報を提供する事です。

すなわち、
「当面の間、現金(資金)が不足する事態は避けられる」と自信を持って言える準備(体制)とは、どのようなものか
という内容を取り上げます。

経営者が誤解している資金ショートを起こさない理由

当たり前の事ですが、「当面の現金の残高推移がプラスである」という事が確認出来ていれば、問題はないはずです。

問題は、
どうすれば、「当面の現金の残高推移がプラスである事が確認出来ている」という状態は実現出来るのか
という事です。

なお、この点について考える前に、確認しておかなければならない点があります。実は、経営者は、以下のような状態を目指す事で、対策をしているつもりになっているケースがあるのです。
自社を赤字にしない
試算表の期末予想で現金勘定がプラスである

しかし、これらは全て間違いです。

これらの状態が実現出来ても、現金がプラスで推移するとは限りません。その理由は、関連記事にて紹介済ですので、ここでの説明は省略します。

資金収支予測以外で資金ショートを避ける為の方法

こうした点について、十分に理解している会社では、資金収支の予測をしっかりと行い、その結果を活用して現金の推移をプラスに維持する事の重要性は理解しています。

しかし、その「資金収支予測」をしっかりと行う労力を嫌って、または、その能力が社内にない為に、もっと簡単な方法でこの問題に対応しようとする会社があります。

次に、そうした方法について見ていきたいと思います。

(ご参考)
この記事では、「資金収支予測」という用語を用いていますが、これは、関連記事における「現金収支予測」と同じ意味です。

現金支出をコントロールする事で資金ショートを防ぐ妥当性

まず、「現金支出を資金が足りる範囲に抑えれば良い」という考え方があります。「確実に入金となる金額を把握し、それをもとに現金の支出をコントロールすれば、資金不足にはならないだろう」という考え方です。

このような方法は、理論上ではうまく働きます。ですから、こうした手法を採用される方のお気持ちは理解出来ます。しかし、このような事業運営は、殆どの会社において破綻します。

それは、こうした事業運営を行う為には、管理部門がその他の部門(経営者を含む)をコントロールして支出をセーブさせる必要があるからです。そして、多くの会社にとって、そのような管理部門を持つ事は現実的ではない為です。

想像してみて下さい。目の前に取りたい商売があって、その為には自社を危険にさらすほどの資金が必要だったとします。こうした時に、経営者や担当部門が資金を使おうとするのを、管理部門は本当に止められるでしょうか。それだけの強い管理部門がある会社は少数派ではないでしょうか。

こうしたシチュエーションでも間違いなく資金不足を防ぐ為には、こうした事態を早めに予測し、その為の準備をしておくしかありません。

資金不足が解ってから現金調達する事で資金ショートを防ぐ妥当性

次に、「資金ショートが予想されてから(その事態が目前に迫ってから)、資産を売って現金にしたり、金融機関から借り入れをしたりして、現金を用意すれば良い」という考え方があります。

しかし、この方法も、殆どの会社にとっては危険と言わざるを得ません。なぜならば、よほど大規模な資金が、柔軟に、かつ、迅速に調達出来るような体制が組める場合を除き、資金調達が間に合うとは限らないからです。

考えて頂ければ簡単な事です。しっかりとした資金予測をしていない会社において、資金が不足する事が発覚するのは、その事態が現実となる何日前の事でしょうか。そして、それから現金調達をするとして、確実に調達出来ると何故言えるのでしょうか。

資金調達策を成功させる為には、結局、かなり早い段階で現金が足りないという事を把握する必要があります。結局、資金予測の作業を軽視する事は出来ないのです。

資金ショートを防ぐ為に妥当な対策

これらの点を踏まえると、殆どの会社にとって、資金ショートを確実に防ぐ為には、結局、高いレベルでの「資金収支予測」を行う以外に方法はありません。その上で、前述のような考え方を用いて支出をコントロールしたり、不足する現金を調達したりするしかないのです。

その他の方法は、確実な方法とは言い難いのです。

(ご参考)
「当面の入金がなくても、予測されている支出が全て支払えるだけの現金がある」状態を目指す管理部門の方もいらっしゃいます。しかし、それに拘る事は、あまりお勧めは出来ません。自社の成長の事を真剣に考えている経営者であれば、自社の資金を有効活用するのが自然な姿である為です。

資金ショートを起こさない為に求められる資金収支予測とは

では、「自社が資金ショートを起こさない為の資金収支予測には、何が求められるのか」を確認していきましょう。

この記事の前半で紹介した、「当面の現金の残高推移がプラスである」という状態の為に必要となる「資金収支予測」とは、以下のようなものであると言えます。

今後の日々の現金残高が常にプラスである事が、
支出については、全ての部門・担当者が行う可能性のある支出を漏れなく把握し、
入金については、その入金が減額となるリスクを十分に評価した上で、
管理(予想)出来ている。

関連記事において紹介済ですが、支出面においては、「既に計画されているもの以外にも支出が行われる」というリスクに気をつけなければならず、入金面においては、「入金が予定通り行われない」という事が多いという特徴がある為です。

資金ショートを防ぐ対策の難しさ

改めて考えてみると、資金ショートを防ぐ為の対策が、思っていた以上に難しい事を感じて頂けると思います。そして、それが、「会社を資金ショートから確実に守る」という、当たり前の事を実現させる難しさを意味しているのです。

また、それが、関連記事でも取り上げた、「黒字でも潰れる会社の多さ」に繋がり、歴史ある企業の多くが、驚くほど経理(経営管理)に力を入れている理由の一つでもあります。

なお、この問題に関しては、財務状態や資金調達の手段に恵まれているはずの大手企業の方が、中小企業よりも真剣に取り組んでいるケースが多いようにすら感じられます。それは、そうした会社ほど、この問題に真剣に取り組む必要性を理解しているからかもしれません。

事業運営の土台としての資金ショート対策

しかし、逆に言えば、こうした当たり前の「資金ショートを防ぐ為の対策」が出来れば、自社にとっての最悪の事態である「自社が資金ショートで潰れる」という事態は避ける事が出来ます。

そして、この作業からは、自社が潰れるリスクを拡大させない範囲で使う事が出来る「新規投資の金額」を把握する事も出来ます。

すなわち、この「資金収支予測」の作業は、「自社を潰さない」為の「経営の土台を固める作業」であると同時に、「攻めの準備である」とも考えられるのではないでしょうか。

是非、この記事をきっかけとして、この問題に真剣に取り組んで頂きたいと思います。

後編では、この問題に対応する自社の体制(資金繰り体制)の水準をチェックして頂く為の情報についても紹介させて頂きます。

この連載では、関連記事にて、こうした問題への対策についても紹介させて頂いております。宜しければ、それらの記事もご一読下さい。

なお、当社では、様々なビジネスコンサルティングに関するサービスの一環として、こうした「事業継続のリスクに関する分析や対策」についても支援させて頂いております。