事例「会社を成長させる方法が解らない」
(売上アップの為の現状分析)

売上が長く停滞している会社を、再び成長路線に戻したい。新規事業に活路を求めようとしていた経営者の思い込みを白紙に戻し、「現状分析」を改めて行う事によって見いだされた「売上をアップさせられる可能性」とは。

この記事では、経営支援の事例を取り上げ、経営や事業運営に関して問題を抱えた状態をどのように変化させる事が可能なのかについて紹介します。事業に携わる方で、問題が解決した先が見えずに悩まれている方に参考にして頂ければ幸いです。

支援前の状態

  • 売上が伸びない時期が長く続いている。自社の事業を以前のような成長路線に戻したいが、何をすれば良いのか解らない。
  • 自社の事業が属する業界の成長も止まっており、ここ数年は自社の売上も前年割れが続いている。経営者は周辺事業への進出(新規事業)に活路を見いだそうと考えている。
  • 顧客のニーズに応える為の商品開発(改善)には従来以上に力を入れており、以前と比べて自社の努力が足りないという事はないはずだと経営者は考えている。
  • 事業内容は、法人向け設備の製造販売。

支援内容と支援後の状態

この会社の経営者は、新規事業によって、今後の自社の売上を伸ばしていく事を検討していました。

新規事業について詳しく計画を伺った所、確かに、自社のこれまでの強みを活かせる可能性が高い計画である事が確認出来ました。しかし、そのマーケットには他社の進出も多く、激しい競争に巻き込まれる事が予想されました。

この為、「自社の既存の商売」について改めて分析する事を提案し、同意を頂きました。新規事業を行うにしても、既存事業の今後の扱いは重要ですし、「既存事業での自社の強み」について分析しておく事は、新規事業を考える上でも役に立ちます。

そして、分析によって解った事は、この会社は既存事業で十分な競争力を持っているという事でした。

商品に関する技術力については言うまでも無く、コスト競争力(同じものを他社と同等以下の原価で作る能力)についても問題はありませんでした。ただし、業界自体が縮小傾向にある事は確かであり、既にマーケットから退出している企業も出始めていました。

更に分析を続けて確認出来た事は、この企業が既存事業で取れるはずのマーケットシェアは現状よりも遙かに高い水準であり、今後のマーケットの縮小を前提としても、マーケットシェアを上げていく事が出来れば、当面は十分な自社の成長が可能という事でした。

この仮説を検証する為、情報を収集・蓄積する仕組みを新規に構築し、継続して分析を行う事にしました。

その結果、既存事業の顧客は、購買先を検討する際に、この会社の商品を前向きに検討している事が解りました。顧客から、「会社としては」選ばれていたのです。しかし、実際の購買先としては、多くの場合で他社の商品が選ばれていました。

すなわち、条件さえ合えば、この会社の商品が選ばれていたはずの商売は多かったのです。これらの情報から、この会社がマーケットシェアを上げられる可能性は十分にある事が確認されました。

その後の自社に関する分析で、この会社は「より高い性能のものを提供する」という商品中心(技術本位)の考え方から抜け出せていない事が解りました。

確かに、マーケットに出ている商品の性能が顧客の期待よりも低い時には、「高い性能」は差別化要因(自社が選ばれる理由)になります。しかし、時代と共に顧客の要求は変化します。

既に普及期に入った商品群に対する顧客のニーズは、「必要最低限の機能と、それに見合う値段」であったり、「自社の仕様に合わせた納品」であったりと変化していました。この会社は、その変化に対応出来ていなかったのです。

また、この会社は顧客からニーズやクレーム情報の収集は行っていましたが、その技法が適切なものではありませんでした。

顧客から、この会社から買った商品(この会社が選ばれた商売)についての情報は収集出来ていましたが、選ばれなかった商品(顧客のニーズを満たせなかった商売)についての情報が入ってきていなかったのです。

これらの問題点を見直す事で、この会社は既存事業でマーケットシェアを上げる事が不可能ではないという分析結果が出ました。ただし、社内で求められる意識変革(業務見直し)は相当なものであり、決して難易度は低くないという条件付きです。

この分析結果を受けて、新規事業と既存事業、どちらで成長を目指していくのかについての議論を改めて行い、結果、既存事業での成長を目指す事が決まりました。

この後、この会社は商売のスタイルを大幅に変更しました。

これまでは、

「良い商品を揃えておき、顧客が選んでくれるのを待つ」

という方針でしたが、これを、

「重点顧客の購買に関しては、基本的に全て取りに行く(自社に出来ない理由がない限り、顧客の要望を必ず満たす)」

という方針に切り替えたのです。

その為に業務の体制も見直しました。

全てが上手くいく訳では勿論ありません。しかし、これまでとは変わり、受注出来なかった商売がどの位あったのかは解るようになり、また、受注出来なかった理由についても把握出来るようになりました。

この変化によって、この会社は、自社が売上を伸ばす上で必要な努力を、不安無く行っていく事が出来るようになったのです。当初の新規事業という方針と比べても、より確実に会社を成長させられる道を見つける事が出来たと言えるでしょう。

当社から見た解説

以前は頑張れば自社の事業を成長させる事が出来たのに、最近、どれだけ努力しても結果が出ない、というような話を伺う事は少なくありません。結果、自社をどのように導いていけば良いのか悩まれる経営者が増えているように思います。

こうしたケースの多くにおいて共通しているポイントは、「その会社の事業を取り巻く環境が以前とは大きく変わっている」という事です。

「どのように頑張れば自社が成長出来るか明確であった」時代が終わった場合、一度立ち止まって、「今後、どのように頑張れば自社を再び成長させていく事が出来るのか」という事を考える事が、従来から続く努力以上に求められている事が多いように思います。

その上で必要な事が、「自社を取り巻く環境についての現状分析」です。

多くの会社では、日頃から、社内で、また、社外とも様々な議論をされているでしょうし、「現状分析」と言われても、「自社の事は自分が一番良く解っている」「行う必要性が解らない」などと思われる方が多いかもしれません。

しかし、「自社を成長させる道筋が解らない」「従来通りの努力をしても結果が出ない」といった状態になった場合、自社の事業を取り巻く状況について、一から分析し直してみる価値はあるように思います。

実は、以前とは商売の土台が変わっている場合であっても、「商売に関わり続けていると、その変化に気づく事が困難」である事が少なくないのです。また、業界で当たり前のように言われていることが、個々の会社の改善にとっては正しくない事も多いように思います。

今回の会社のケースでも、当初、「売上(受注)を取る為に何が必要か(努力すべき方向性)については、自分たちが一番良く解っている」という認識を経営者はお持ちでした。

また、売上が低下傾向なのは、「業界全体が縮んでいる状態なので、仕方がない」という割り切りをされており、「自社を成長させる為には、既存事業だけでは限界がある」という理解をされていました。

しかし、こういった認識(前提)を一度白紙に戻して頂き、外部の視点から分析をさせて頂いた結果、その認識の殆どは疑うべきものであるという結論が出ました。そして、既存事業における成長の可能性を見つける事が出来ました。

結果、この会社は努力する方向を変える事になりました。今後も結果を出し続け、売上を拡大させ続けていく事は簡単な事ではありませんが、努力すべき方向性が明確になった事で、以前のような不安を抱えながらの事業運営ではなくなる事でしょう。

現状を改善する為の道筋が見えない場合、現状から飛躍したプランを立案する努力をする前に、改めて「現状分析」に力を入れて頂く事をお勧めします。

ただし、自社の置かれた状況は、自社に近い立場からは見えづらいものです。自社の業界に長く携わった人材ばかりで検討を行わない等、この点への配慮は十分に行って下さい。

また、多くの分析では、数字等の分析も必要となります。必要に応じて、そういった分析能力に秀でた人材を参画させる等の手配が必要な場合もあるでしょう。

現状分析を成功させる上では、まず、十分な体制を構築する事が重要です。